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3Dプリンター用フィラメントの基礎知識!基本3選から木質・エコマテリアルまで徹底解説

「3Dプリンターを導入したけれど、最初にどの材料(フィラメント)を買えばいいかわからない」

「プラスチックの種類が多すぎて、違いや扱い方がイメージできない」

3Dプリンターをこれから始める企業の新任担当者の方や学生の方から、このようなご相談をよくいただきます。

3Dプリントの成否や出来上がりのクオリティは、使う材料の特性を正しく理解しているかどうかで大きく左右されます。どれだけ高性能な3Dプリンターを用意しても、用途に合わない材料を使ったり取り扱いを誤ったりすると、造形ミスやノズル詰まりの原因になってしまいます。

この記事では、3Dプリンターの基礎知識である「フィラメント」の基本構造から、初心者の方が最初に選ぶべき定番素材、さらに造形失敗を防ぐ保管のコツまでをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 3Dプリンターにおける「フィラメント」の基本構造と重要性
  • 初心者(企業・学生)が最初に選ぶべき基本のフィラメント3選とその特徴
  • 造形ミスを防ぐための使用上の注意点と正しい保管方法(湿気対策)
  • 他社と差別化できる木質・エコマテリアルフィラメントの可能性

3Dプリンターの「フィラメント」とは?初心者向けに基礎から解説

読者
読者

3Dプリンターの「フィラメント」って、インクカートリッジのようなものでしょうか?どんな仕組みで動いているのかイメージが湧かなくて…

担当者
担当者

フィラメントは紙の印刷でいう「インク」にあたる材料ですが、液体ではなく「細い糸状のリール巻きプラスチック」です。高温で溶かしながら立体を作っていく仕組みなんですよ。

3Dプリンターを操作するうえで、材料である「フィラメント」の存在と役割を正しく把握することはすべての第一歩となります。

熱溶解積層(FDM)方式で使われる糸状の樹脂材料

個人のメイカースペースから企業のR&D(研究開発)部門、学校の教材まで幅広く普及している3Dプリンターの多くは、熱溶解積層(FDM:Fused Deposition Modeling)方式を採用しています。

FDM方式では、リール(ボビン)に巻かれた直径1.75mmほどのプラスチック製の糸(フィラメント)を機械の中に引き込みます。先端の加熱ノズル(通常200℃前後に加熱)で熱を加えることで瞬時に溶かし、細く絞り出しながら1層ずつ積み重ねて立体的な造形物を作り上げていきます。

つまり、フィラメントは3Dプリントという技術において、すべての骨組みであり肉付けとなる最も基本的な原寸材料なのです。

造形物の強度・質感・成功率を大きく左右する重要パーツ

同じ3Dプリンター本体を使用しても、装填するフィラメントの素材や品質によって、完成した造形物の性質はまったく異なります。

たとえば、カチッとした硬さを持つ素材もあれば、ゴムのようにしなる柔軟な素材、さらには本物の木粉を混ぜ込んだ独特の質感を持つ素材まで存在します。用途に合わない材料を選んでしまうと、「ネジ留めしたら割れてしまった」「屋外に置いたら太陽熱で変形した」といったトラブルが起きかねません。

また、フィラメントの線径精度や充填されている樹脂の品質は、プリント時のノズル詰まりや層間の密着度にも直結します。目的に応じた材料の特性を理解し、正しくセットすることが造形成功への最短ルートです。

初心者(企業・学生)が最初に使うべき基本のフィラメント3選

3Dプリンター用のフィラメントには数十種類以上の素材が存在しますが、これから3Dプリントを始める企業の新任担当者の方や学生の方が、最初にすべてを把握する必要はありません。

まずは世界的に最も広く普及している「PLA」「ABS」「PETG」の3大基本素材を押さえることが重要です。それぞれの特性や向いている用途を理解しないまま材料を選んでしまうと、「強度が足りずにパーツが割れてしまった」「熱で変形してしまった」といったミスマッチの原因になります。

【扱いやすさNo.1】PLA(ポリ乳酸)|試作や学習の第一歩に最適

PLA(Polylactic Acid:ポリ乳酸)は、トウモロコシやサトウキビなどの植物由来のでんぷんを原料としたバイオプラスチックです。3Dプリンター入門用として最も推奨される素材であり、学校教育や企業の初期試作で圧倒的なシェアを誇ります。

PLAの最大のメリットは、「造形のしやすさと寸法安定性の高さ」です。プリント時の熱収縮が極めて小さいため、造形物の角が反り上がったり床面から剥がれたりするトラブルが少なく、大型のモデルでも安定して出力できます。また、プリント中にプラスチック特有の不快な臭いがほとんど発生しない点も、オフィスや教室で扱いやすい理由です。

一方で、耐熱温度が約50〜60℃と低い点には注意が必要です。夏の車内や高温になる機械の近くに放置すると簡単に軟化・変形してしまうため、完成品の強度確認や最終製品には不向きで、主に「外観形状の確認用試作」や「フィギュア・モデルの作成」に適しています。

【強度・耐熱性】ABS|実用部品や治具の作成に適した素材

ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)は、家電製品の筐体や自動車の内装パーツ、プラスチックブロック玩具など、身の回りの工業製品に幅広く使われている代表的な汎用プラスチックです。

ABSの特徴は、「優れた耐衝撃性と耐熱性(約70〜90℃)」にあります。印刷後の機械的強度が高く、後からヤスリ掛けや塗装、穴あけなどの二次加工を施しやすいことも大きなメリットです。そのため、工場内で使用する製造用の治具や、実際に荷重がかかる構造部品の試作に適しています。

しかし、プリント時の熱収縮が非常に大きいため、冷却過程で造形物が歪んだり、プリントベッドから剥がれ落ちやすいという難点があります。室内温度を一定に保つ密閉型(エンクロージャー付き)の3Dプリンターが必要となるケースが多く、PLAに比べると造形の難易度は高めです。

【バランス型】PETG|透明感と適度な粘り強さを併せ持つ万能タイプ

PETG(Polyethylene Terephthalate Glycol)は、ペットボトルでおなじみのPET素材にグリコールを添加し、3Dプリント用に改質したポリエステル樹脂です。

いわば「PLAの造形しやすさ」と「ABSの強度・耐熱性」を良いとこ取りしたバランス型の素材といえます。耐熱温度は約70〜80℃あり、粘り強さ(靭性)が高いため、耐衝撃性にも優れています。また、耐水性や耐薬品性を持つため、液体を入れる容器や屋外で使用するパーツの作成にも向いています。

PLAからのステップアップとして非常に優秀ですが、粘り気が強いためプリント時にノズルから糸を引く「糸引き現象」が起きやすい特徴があります。スライサーソフトで引き戻し(リトラクション)の設定を適切に調整して使用するのがポイントです。

素材名 造形のしやすさ 耐熱性・強度 主な推奨用途
PLA ★★★★★(極めて容易) ★★☆☆☆(低め) 形状確認の試作、教材、展示モデル
ABS ★★☆☆☆(難易度高) ★★★★☆(高い) 実用部品、治具、耐熱性が必要なパーツ
PETG ★★★★☆(比較的容易) ★★★☆☆(バランス良好) ボトル・容器類、屋外パーツ、機械カバー

失敗を防ぐ!フィラメントを使用・保管する際の注意点

3Dプリンター初心者の方が「急に造形精度が落ちた」「表面にツブツブができる」と悩む原因の多くは、3Dプリンター本体の故障ではなく、フィラメントの「吸湿(湿気を吸ってしまうこと)」にあります。

フィラメントの特性と正しい取り扱い方法をあらかじめ知っておくことで、無駄なプリント失敗や材料の廃棄を防ぐことができます。

造形不良(糸引き・ノズル詰まり)の原因となる「湿気対策」

3Dプリンター用フィラメントに使用される樹脂(特にPLA、PETG、ナイロン等)は、空気中の水分を非常に吸収しやすい性質を持っています。湿気を吸ったフィラメントをそのまま高温のノズルで加熱すると、内部に含まれた水分が瞬間的に沸騰して蒸気化します。

この現象により、プリント中に「パチパチ」という破裂音が鳴ったり、ノズル口から樹脂が均一に出ずに細い糸を引いたり、造形物の表面に小さな気泡や凹凸が発生して強度が著しく低下します。最悪の場合、ノズル内部で膨張して深刻なノズル詰まりを引き起こします。

読者
読者

開封したばかりのフィラメント以外は、そのまま置いておくとすぐに湿気てしまうのですね…どのように保管すればいいでしょうか?

担当者
担当者

現場でおすすめなのは、使用前の「フィラメントドライヤー(専用乾燥機)」による加熱乾燥と、未使用時の「乾燥剤+真空パック」での密封保管です。これだけで造形安定性が劇的に変わりますよ。

高品質な造形を持続させるために、プロの現場でも実践されている以下の2つの湿気対策を取り入れましょう。

  • 保管時:乾燥剤入りの真空パックで密封する
    使い終わったフィラメントや出番の少ないフィラメントは、剥き出しのまま放置せず、強力なシリカゲル(乾燥剤)と一緒に密封袋や真空パックに入れて空気を抜いて保管します。
  • 使用時:フィラメントドライヤー(専用乾燥機)を活用する
    梅雨時期や長期保管していた材料を使う際は、印刷前または印刷しながら専用のフィラメントドライヤーで数時間〜半日程度加熱処理を行い、内部の水分を確実に飛ばしてから出力します。

初心者によくあるトラブルと対処の心構え

湿気対策以外にも、初心者が最初につまずきやすいポイントとして「1層目の定着不良(ベッドから剥がれる)」があります。

3Dプリントにおいて、1層目がプラットフォームにしっかりと貼り付かないと、途中で造形物が動いて全体が崩れてしまいます。これを防ぐためには、ノズルとベッドの隙間を正しく調整する「レベリング」を丁寧に行い、必要に応じてスティックのりや専用の定着シートを活用することが重要です。

万が一造形エラーが起きた際も、機械の故障を疑う前に「材料が湿気ていないか」「用途や環境に合ったフィラメントを使えているか」を順を追って確認する習慣をつけましょう。

▶関連記事:
「1層目が剥がれる…」を解決!定着率をアップさせる4つのコツ

※弊社ECサイト「こふじ商店」にて掲載中のブログが開きます。

基本の次はこれ!木質・エコマテリアルフィラメントで差をつける

PLAやABSなどの基本素材の扱いに慣れてきたら、他社製品との差別化や自社ブランドの価値高揚をもたらす特殊フィラメント(エコマテリアル)の活用がおすすめです。

特に近年、脱炭素やSDGs推進に取り組む製造業・デザイナーや、地域資源の活用を目指す自治体の間で注目を集めているのが、木粉などの天然由来素材を配合した「木質フィラメント」です。

本物の木の質感と香りを楽しめる木質フィラメントの魅力

木質フィラメントとは、ベースとなる樹脂に本物の木粉を混練(ブレンド)して製造された特殊フィラメントです。

通常のプラスチックフィラメントとは異なり、完成した造形物はテカリが抑えられたマットで温かみのある質感に仕上がります。さらに、プリント時の加熱によって、まるで木工所で木を削っているかのような心地よい木の香りが広がる点も魅力です。表面に木工用のサンディング(ヤスリ掛け)やオイル仕上げを施すことで、より本物の木製品に近い豊かな風合いを引き出すことができます。

しかし、従来の一般的な木質フィラメントには「ノズルが詰まりやすい」という大きな課題がありました。木粉の粒径が揃っていないと、ノズル内部で焦げ付きや流路の閉塞を起こし、頻繁にプリントがストップしてしまうためです。

読者
読者

木質フィラメントは造形が難しいイメージがありますが、標準的な3Dプリンターでも使えるのでしょうか?

担当者
担当者

材木屋としての知見を活かした独自の配合技術により、一般的な0.4mmノズルでも詰まりにくく安定したプリントを実現できる木質フィラメント(marui filament)も登場しています。

株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab」が展開する「marui filament」は、広葉樹端材由来の木粉と再生PLAを組み合わせることで、全体のリサイクル率95%という極めて高い環境価値を実現しています。独自の微粉砕・混錬技術によってノズル詰まりを極限まで抑えているため、一般的な家庭用・業務用3Dプリンターの標準ノズル(0.4mm径)でもスムーズな連続造形が可能です。

企業のSDGs対応や地域材活用を叶えるオリジナル素材の開発

木質フィラメントの可能性は、既製品の材料を購入してプリントすることだけにとどまりません。

自社工場で発生する木材の端材や鋸屑、さらには自社製品に使用している固有の樹種、自治体で管理している森林の間伐材など、「お客様ご自身がお持ちの木材」を原料として組み込んだ、世界にひとつだけのオーダーメイドフィラメントを製造・開発することも可能です。

自社の廃棄素材を高品質なフィラメントへとアップサイクルし、ノベルティグッズやインテリア空間の部材、あるいは自社製品のパーツとして3Dプリント造形することで、単なる環境配慮を超えた強力なストーリー性とブランド価値を創出できます。

▶関連記事:【SDGs】他社と被らない木製ノベルティの作り方|端材・間伐材を3Dプリントで唯一無二のストーリーへ

まとめ:用途に合わせたフィラメント選びで3Dプリントを活用しよう

3Dプリンターをこれから始める企業の新任担当者や学生の方にとって、材料である「フィラメント」の特性を正しく理解することは、造形成功への最も重要なステップです。

まずはそれぞれの特徴を押さえ、目的に合わせて素材を使い分けることからスタートしましょう。

  • PLA:寸法安定性が高く扱いやすさNo.1。形状確認の初期試作や教材に最適
  • ABS:耐熱性・強度に優れる。実用部品や治具の製作に適しているが造形難易度は高め
  • PETG:強度・耐熱性・造形性のバランスが取れた万能タイプ。ボトルや屋外パーツに便利
  • 保管・管理:造形不良の多くは「吸湿」が原因。フィラメントドライヤーと乾燥剤+真空パックで徹底対策

基礎的なプラスチック素材の扱いに慣れた後は、高い環境価値と独自の質感を持つ「木質フィラメント」や「エコマテリアル」へのステップアップがおすすめです。

株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab」では、リサイクル率95%・0.4mmノズル対応の「marui filament」をはじめ、お客様がお持ちの木材や端材を活用したオーダーメイドフィラメントの製造・開発(フィラメント試作サービス)を提供しています。「自社の廃棄素材をアップサイクルして新商品を開発したい」「自社ならではのストーリー性を持った3Dプリント素材を作りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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