3Dプリンター用フィラメントの種類と特徴一覧!失敗しない選び方をプロが解説
「3Dプリンターを導入したけれど、どのフィラメントを選べばいいのか分からない」「PLAやABSなど、種類が多すぎて違いが理解できない」とお悩みではありませんか?
3Dプリンター用フィラメントには、初心者向けの扱いやすい樹脂から、プロ仕様の高強度なもの、さらには環境に配慮した最先端のサステナブル素材まで、非常に多くの種類が存在します。用途や3Dプリンターの方式に合わない材料を選んでしまうと、「造形中に歪んでしまった」「ノズルが詰まって動かない」といったトラブルの原因にもなりかねません。
本記事では、3Dプリンター用フィラメントの代表的な種類と特徴、失敗しない選び方をプロの視点から分かりやすく解説します。さらに、近年注目を集める「木質系・サステナブルフィラメント」の可能性についてもご紹介します。この記事を読めば、あなたのプロジェクトに最適な素材がすぐに見つかるはずです。
読者
フィラメントの種類がたくさんありすぎて、何を選べばいいか迷ってしまいます。そもそも、3Dプリンターの方式によって使える材料も違うんでしょうか?
担当者
おっしゃる通りです!実は、3Dプリンターの「造形方式」によって使える材料は根本的に異なります。まずはそこを整理したうえで、熱で溶かして積み上げる「FDM方式」で使われるフィラメントの種類を見ていきましょう!
- 3Dプリンターの代表的な造形方式と使用素材の違い
- 主要な樹脂フィラメント(PLA、ABS、PETGなど)の特徴と用途
- 用途や目的に合わせた失敗しないフィラメントの選び方
- 端材や未利用資源を活かした「木質サステナブルフィラメント」の可能性
目次
1. 3Dプリンターの造形方式と使用する材料の違い
3Dプリンターの材料を選ぶ前に、まず知っておくべきなのが「プリンターの造形方式」です。方式が異なると、使用できる材料の形状や性質がまったく異なります。ここでは、代表的な2つの方式とそれぞれの材料の違いを簡単に解説します。
熱可塑性樹脂を使う「FDM(熱溶解積層)方式」
FDM(Fused Deposition Modeling)方式は、「FFF方式」とも呼ばれ、現在最も普及している造形方式です。リール状に巻かれた紐状のプラスチック樹脂(=フィラメント)を熱で溶かし、ノズルから押し出して1層ずつ積み重ねることで立体を造形します。
強度に優れた実用部品から、環境に優しいサステナブル素材、さらには本物の木質繊維を混ぜ込んだ特殊素材まで、選べるフィラメントの選択肢が非常に幅広いのが最大の特徴です。marui labで導入している「senju」や「Bambu Lab P1S」も、このFDM方式(フィラメント式)を採用しています。
液体レジンを使う「光造形方式」
光造形方式は、紫外線などの光をあてると固まる性質を持つ「液体レジン(光硬化性樹脂)」を使用する方式です。液体のプールに光を照射して、1層ずつ硬化させながら造形物をつくり上げます。
非常に滑らかで高精細な造形が得意な反面、使用する材料はリール状のフィラメントではなく「液体」であり、取り扱いや洗浄などの後処理に専門的な手順が必要です。また、材料の選択肢も光硬化性レジンに限定されるため、素材の質感や多様な環境負荷低減といったアプローチはFDM方式に比べて難しくなります。
このように、「フィラメント」と呼ばれる材料を使用するのは、主にFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターです。ここからは、このFDM方式で使われるフィラメントの具体的な種類について深掘りしていましょう。
2. 3Dプリンター用フィラメントの代表的な種類と特徴一覧
FDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターでは、熱で溶かして固める「熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)」がフィラメントとして使用されます。一言でプラスチック樹脂と言っても、強度、耐熱性、扱いやすさなどの性質は素材によって大きく異なります。
まずは、現在よく使われている代表的な樹脂フィラメントの特徴を一覧表で整理しました。その後、それぞれの素材が持つ具体的な強みや注意点について詳しく見ていきましょう。
| 素材名 | 造形のしやすさ | 耐熱性・強度 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|
| PLA(ポリ乳酸) | 極めて高い(反りにくい) | 低い(約50℃で変形) | 形状確認、デザイン試作、初心者向け |
| ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) | 普通(反りやすい) | 高い(約80℃〜) | 強度や耐久性が必要な実用部品、治具 |
| PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール) | 高い(比較的反りにくい) | 中程度(約70℃) | 耐水性や靭性が必要な日用品・容器 |
| PP(ポリプロピレン) | 難しい(収縮率が高く反りやすい) | 中~高(耐薬品性に優れる) | 柔軟性と耐久性、耐熱性を両立するパーツ |
「PLAが反りにくくて一番扱いやすい」とのことですが、すべての造形物をPLAで作っても問題ないのでしょうか?
- 形状を確認するための試作であれば問題ない
- 実際に熱が加わる環境(車内など)で使用される製品でもPLAで大丈夫
答えは A です
PLAは形状確認などのプロトタイプには最適ですが、実際の製品や実用品として使用する場合は、用途に応じた材料選定が必須です。例えば、夏場に車内で使用するドリンクホルダーなどの製品をPLAで作ってしまうと、熱でぐにゃりと歪んでしまいます。そういった「耐熱性や耐久性」が求められる実用品では、PLAではなく、PP(ポリプロピレン)やPETG、ABSなどの素材を慎重に選定する必要があります。
PLA樹脂(ポリ乳酸) – 初心者向け・形状確認に最適
PLAは、トウモロコシやジャガイモなどの植物由来のデンプンを原料とした環境に優しい樹脂です。3Dプリンターの材料のなかで最も熱収縮(熱による縮みや変形)が少なく、非常に反りにくいため扱いやすいのが最大の特徴です。家庭用3Dプリンターの標準的な素材として広く採用されています。
【メリット】
- 造形中の「反り」やプラットフォームからの剥がれが起きにくく、安定してプリントできる
- 出力時に嫌な化学臭がほとんどなく、甘い香りがする
【注意点】
- 耐熱温度が約50℃前後と低いため、夏の車内や熱を持つ機器の近く、お湯がかかる場所では簡単に変形してしまう
- 非常に硬い反面、粘り(靭性)が低いため、強い衝撃が加わると「パキッ」と割れやすい
ABS樹脂 – 高強度で実用部品に選ばれるプロ仕様
ABSは、家電製品やプラスチック製品(レゴブロックなど)に広く使われている、非常に身近でタフなプラスチック樹脂です。優れた強度と耐熱性を持っており、機械部品や工場で使う工具(治具)など、実用的な製品を造形する際に選ばれます。
【メリット】
- 耐熱性が高く、造形後にサンドペーパー(ヤスリ)で削ったり、穴あけ塗装などの加工がしやすい
- 衝撃を吸収する粘り強さがあり、割れにくい
【注意点】
- 熱で冷え固まる際の収縮率が高いため、造形中に大きく反り返りやすい
- プリント時にプラスチック特有の化学臭(ニオイ)が発生するため、しっかりとした換気設備が必要
PETG樹脂 – PLAとABSの良いとこ取りをした万能素材
PETGは、ペットボトルの素材(PET)に「グリコール」を加えて改質したプラスチック素材です。PLAのような「反りにくく出力しやすい安定性」と、ABSのような「優れた強度・耐衝撃性・耐熱性」をバランスよく兼ね備えており、近年非常に人気が高まっています。
【メリット】
- ABSよりも反りにくく、プラットフォーム(ベッド)に定着しやすい
- 耐薬品性や耐水性に優れ、光沢感のある美しい仕上がりになる
【注意点】
- ノズルから押し出される糸引き(ノズルの先端から細い糸のような樹脂が残る現象)が発生しやすく、造形後の仕上げ作業が必要になることがある
PP(ポリプロピレン) – 耐熱性と柔軟性を両立するが扱いが難しい
PP(ポリプロピレン)は、自動車部品や医療器具、タッパー容器など、柔軟性と耐熱性、さらに優れた耐薬品性が求められる分野で重宝される樹脂です。非常に粘りがあり、繰り返し折り曲げても割れない特性(耐疲労性)を持っています。
【メリット】
- 非常にタフで柔軟性があり、耐熱性にも優れる
- 酸やアルカリ、有機溶剤などの薬品に侵されにくい
【注意点】
- 熱収縮率が非常に高く、造形中に極めて反りが発生しやすい(定着しにくい)ため、扱いが最も難しい素材の一つである
- 一般的なプラットフォーム用シートに定着しにくいため、専用の接着剤や3Dプリンターの設定をシビアに調整する必要がある
3. 【用途別】失敗しない3Dプリンターフィラメントの選び方
3Dプリンターでイメージ通りの造形物を作るためには、一般的な樹脂の特性を理解したうえで、「何を作るか(用途)」に合わせて適切なフィラメントを逆算して選ぶことが極めて重要です。
ここでは、実務や製品開発の現場でよくある3つのシチュエーションを例に、失敗しないための具体的な材料選定の基準を解説します。
形状試作・フィギュアなどの外観確認(PLA)
製品のデザインチェック、パーツ同士のかみ合わせ確認、建築模型やフィギュアなど、「強度はそれほど必要ないが、寸法通りに正しく、綺麗に造形したい」というケースでは、迷わずPLA樹脂を選びましょう。
PLAは熱収縮がほとんどないため、大きなパーツであっても端が反り返ってプラットフォームから剥がれる心配がありません。まずはPLAで出力して全体のフォルムやサイズ感を検証するのが、製品開発におけるプロトタイピングの王道ステップです。
実用部品・強度や耐熱性が必要な治具(ABS・PETG)
工場の製造ラインで使用する工具や治具、機械の可動パーツ、あるいは屋外や負荷がかかる環境に取り付ける実用品を作る場合は、ABS樹脂やPETG樹脂が必須となります。
特にABSは優れた強度と耐熱性を持ち、サンドペーパーによる研磨などの後加工もしやすいため、最終製品に近いプロトタイプや実用部品に最適です。ただし、造形時の反りが発生しやすいため、プリンターの庫内温度を一定に保つなどの設備環境を整える必要があります。設備や手軽さを重視しつつ強度も担保したい場合は、比較的反りにくいPETGを選択肢に入れるのが賢明です。
柔軟性や衝撃吸収性が必要なパーツ(TPU)
パッキンやシール材、スマートフォンのカバー、保護クッションなど、「ゴムのような柔軟性や、力を加えたときに曲がる性質(衝撃吸収性)」を求める場合は、TPUなどのゴム系(フレキシブル)フィラメントを選定します。硬い樹脂ではすぐに割れてしまう衝撃の加わる部位において、無類のタフさを発揮します。
担当者
実用部品を3Dプリントする際に最も多い失敗が、「扱いやすいから」という理由だけでPLAを選び、実車テストや熱がこもる場所に取り付けて変形させてしまうケースです。素材選定は『造形のしやすさ』だけでなく、完成したプロダクトが『どのような環境で使われるか』から逆算することが失敗を防ぐ最大のポイントです!
4. 近年注目を集める「木質系・サステナブルフィラメント」とは?
これまでに紹介したPLAやABS、PETGなどの一般的なプラスチック樹脂は、造形性や機能面で非常に優れています。しかし、製造業やデザインの現場において「他社製品との差別化を図りたい」「SDGsや環境配慮(サステナビリティ)のストーリー性を付与したい」というニーズが高まるなか、今もっとも注目を集めているのが「木質系・サステナブルフィラメント」です。
単なるプラスチックの代替品に留まらない、次世代エコマテリアルとしての特徴と魅力をプロの視点から解説します。
木の温もりや質感、香りの経年変化を楽しめる「木質フィラメント」
一般的な木質フィラメントは、ベースとなるプラスチック樹脂に細かく砕いた木粉を配合した特殊な素材です。プラスチックでありながら、焼き物や天然木に近い独特の風合いを持ち、触れたときには本物の木ならではの心地よい手触り感や温かみを感じることができます。
さらに、化学的な人工着色剤を一切排除して作られた高品質な木質フィラメント(marui labの「marui filament」など)であれば、本物の木製家具と同様に、光(紫外線)や時間の経過とともに木本来の色味が緩やかに変化する「経年変化の味わい」を楽しむことも可能です。これは、従来の単色プラスチックにはない、プロダクトに圧倒的な情緒的価値を与える大きな強みと言えます。
環境負荷を低減する「全体リサイクル率95%」の圧倒的なサステナビリティ
現在のものづくりにおいて、環境対応は避けて通れない課題です。サステナブルフィラメントの多くは、植物由来のPLA樹脂などをベースにしていますが、さらに環境価値を高めた先進的な素材も登場しています。
例えば、木工家具製造の過程で発生する「広葉樹の端材」を配合し、ベース樹脂に「再生PLA」を使用することで、全体リサイクル率95%を達成した超環境配慮型の木質フィラメントが実用化されています。これまで廃棄処理コストをかけて処分されるだけだった工場端材や地域の未利用資源を3Dプリントの材料へと生まれ変わらせるアプローチは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を具現化する画期的な手段として、サステナビリティ推進部門からも熱い視線が注がれています。
担当者
従来の木質フィラメントは、ノズル内部で木粉が偏ったり焦げ付いたりしやすく、非常に『ノズル詰まり』を起こしやすいという致命的な弱点がありました。marui labでは、材木屋として長年培った木材の細胞構造への知見と研究により、一般的な3Dプリンターで広く使われている**「0.4mmノズル」でも詰まることなく安定して出力できる独自の配合レシピ**の開発に成功しています!これにより、特殊な大型設備がなくても手軽にサステナブルな木質造形に取り組めるようになっています。
自社端材や地域資源を混ぜ込む「オーダーメイド」の可能性
さらに進んだサステナブルな取り組みとして、単に市販の木質フィラメントを購入するだけでなく、「自社の工場から出る固有の端材」や「地域の歴史ある間伐材・街路樹・繊維系の植物」を原材料として混ぜ込み、世界に一つだけのオリジナルフィラメントを製造するという新しい選択肢もあります。
これにより、ストーリー性のある記念品や自社専用のインテリアなどの製作が可能となり、林業の6次産業化や地方創生、企業のブランディングに直結する強力なソリューションとなります。次の章では、この画期的なオリジナル素材開発を可能にする具体的なサービスについて詳しくご紹介します。
5. 自社専用の素材開発も可能!marui labの「フィラメント試作サービス」
自社で排出される産業廃棄物としての端材や、地域資源である間伐材などを活かして「オリジナルのサステナブルフィラメントを作りたい」と考えても、一般の企業や自治体が自力で開発・製造することは技術的に極めて困難です。なぜなら、木粉などの自然由来の素材はプラスチック樹脂と混ざりにくく、水分や粒度の管理が甘いと3Dプリンターのノズル内部で簡単に目詰まりや焦げ付きを起こしてしまうからです。
こうした課題をクリアし、小ロットでのオリジナル素材開発から3Dプリンターでの検証までを一気通貫でサポートするのが、株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab(マルイラボ)」が提供する「フィラメント試作サービス」です。材木屋としての深い知見と、長年にわたるプラスチック複合材の研究から生まれた、圧倒的な品質へのこだわりをご紹介します。
高品質なフィラメントを生む「2段階製造」と徹底した水分管理
marui labのフィラメント製造プロセスは、原材料を単純に混ぜ合わせて引き延ばすような簡易的なものではありません。3Dプリンターのノズルに負担をかけず、滑らかで安定した出力を可能にするため、独自の厳格なプロセスを導入しています。
【素材開発から試作・テスト出力までの流れ】
1.端材の微粉砕:持ち込まれた木材や植物の端材を、工業用の微粉砕装置を用いて均一な超微粉末へと加工します。
2.ペレットの製造(混錬):高品質なフィラメントを作るため、一度材料をしっかりと混錬(混ぜ合わせ)して「marui pellet」へとペレット化します。このワンクッションを挟んで樹脂と木粉を均一に融合させます。
3.フィラメントの製造:成形されたペレットを再び専用の装置で加熱・押し出しを行い、直径1.75mmの非常に精密な「marui filament」へと製造します。
4.試作・テスト出力:完成したフィラメントを用い、自社のFDM式3Dプリンター「senju」などで実際に造形が可能かどうかの評価テスト(受託テスト出力)までをカバーします。
このプロセスにおいて最も重要となるのが「徹底した水分管理」です。木粉や植物繊維は湿気を吸いやすいため、水分が含まれたまま製造するとフィラメントの内部に気泡が生じ、強度の低下や造形不良に直結します。そのためmarui labでは、「フィラメント用のペレット製造時には木粉の水分」を、「フィラメント製造時にはペレットの水分」をそれぞれ極限まで厳しく管理し、乾燥状態をキープする体制を徹底しています。
金属部品がなければ「木や植物」は概ね何でもフィラメント化が可能
「うちの端材でもフィラメントにできるのだろうか?」と疑問に思われるかもしれませんが、原則として釘やビスなどの金属部品が付着していない木材や植物であれば、概ねどのようなものでもフィラメント化が可能です。
家具製造時の広葉樹の端材はもちろん、山林の維持で発生する間伐材、都市の景観維持で伐採された街路樹、さらには繊維系の植物にいたるまで幅広く対応できます。持ち込まれた固有の素材をリサイクル率95%のレシピなどと組み合わせることで、ストーリー性と圧倒的な環境価値を兼ね備えた自社専用の「オーダーメイドフィラメント」が誕生します。
これにより、自社の廃棄コストを削減するだけでなく、「自社の端材で作ったノベルティ・インテリア」「地域の木で編み上げたサステナブルな製品」といった価値あるプロダクト開発へと昇華させることが可能になります。未利用資源の処分や、新規の環境配慮型プロジェクトの素材選定にお悩みの方は、ぜひ一度marui labへご相談ください。
6. 3Dプリンターフィラメントの適切な保管方法と注意点
用途や目的に合った最適なフィラメントを選んでも、日頃の「保管方法」や「機器の設定」が適切でないと、3Dプリントの成功率は著しく低下してしまいます。特にデリケートな特殊フィラメントやサステナブル素材を扱う上で、絶対に押さえておくべき2つのポイントを解説します。
天敵は「湿気」!造形不良を防ぐ防湿管理の徹底
3Dプリンター用フィラメントの多くは吸湿性(水分を吸いやすい性質)が高く、空気中の水分を吸収してしまう性質があります。水分を含んだフィラメントをそのまま使用して加熱すると、ノズル内部で水分が急激に沸騰・気化し、プチプチという異音とともに造形物の表面にブツブツとした気泡が発生する原因になります。これは見た目の美しさを損なうだけでなく、積層間の密着度を低下させ、強度の著しい不足を招きます。
【効果的な保管方法】
- 使用しないフィラメントは、必ず強力な乾燥剤(シリカゲルなど)と一緒に密閉性の高いジッパー付きバッグやプラスチック製の保管ボックスに入れて保管する。
- 特に吸湿しやすい素材や長期保管していたフィラメントは、使用前に専用のフィラメント乾燥機(ドライヤーボックス)にかけて完全に水分を飛ばす。
marui labでのオリジナルフィラメント製造プロセスにおいて、ペレット成形時やフィラメント成形時の水分管理を極限まで徹底しているのも、この「水分の付着」が造形物の品質を最も左右する要素だからです。家庭やオフィスで出力する際も、防湿管理は徹底しましょう。
3Dプリンターのノズル径や対応温度の確認
フィラメントを購入・使用する前に、自社で運用している3Dプリンターの「スペック(仕様)」を確認することも忘れてはなりません。フィラメントの直径(一般的には1.75mm径が主流ですが、一部に2.85mm径も存在します)が合致しているかはもちろん、以下の2点に注意が必要です。
- ノズル対応温度:ABSや高機能エンプラ樹脂は、ノズルを240℃〜300℃近くまで高温に加熱する必要があります。所有している機種がその温度まで対応しているか確認が必要です。
- ノズル径と耐摩耗性:木粉やカーボンファイバーなどが高濃度で配合された特殊なフィラメントは、標準的な真鍮製のノズルを早く摩耗させてしまったり、粒度の問題でノズル内で流路を閉塞させたりするリスクがあります。
素材の特性を理解し、プリンター側のスライサー設定(温度・速度・引き戻し量など)を正しくチューニングすることが、3Dプリントを失敗させないための確真のアプローチです。
7. まとめ:用途に合わせた最適なフィラメント選びと素材開発の可能性
3Dプリンター用フィラメントには多くの種類があり、それぞれ強度、耐熱性、造形のしやすさといった特性が大きく異なります。まずは自身の3Dプリンターの造形方式(主にFDM方式)を確認したうえで、「何を作るか」「どのような環境で使用するか」から逆算して最適な素材を選定することが、ものづくりを成功させる最大の近道です。
今回の重要なポイントを振り返ってみましょう。
- 用途に応じた材料選定:形状確認には扱いやすい「PLA」、実用部品や治具には強度・耐熱性に優れる「ABS」や「PETG」など、特性に合わせた使い分けが不可欠。
- 実用品での熱対策:電球の熱を受けるランプシェードなど、熱が加わるプロダクトにPLAを使用するのは厳禁。耐熱性を持つ「PP」や「PETG」などの選定が必要。
- 保管時の湿気対策:フィラメントの吸湿は造形不良や強度低下の最大の原因。乾燥剤を入れた密閉容器での管理や、使用前の乾燥が不可欠。
- サステナブル素材の進化:木工端材や未利用資源を活用した「木質系フィラメント」は、プロダクトに本物の木の質感や香りの経年変化という新しい価値を付与できる。
さらに現在のものづくりでは、市販の樹脂を使うだけでなく、自社の工場端材や地域の間伐材・植物繊維などを混ぜ込んだ「世界に一つだけのオリジナルサステナブルフィラメント」を開発するという選択肢も現実的になっています。
株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab」では、材木屋としての知識と独自の2段階製造プロセス(ペレット化・厳格な水分管理)により、一般的な3Dプリンターの標準である「0.4mmノズル」でも詰まらずに安定して出力できる高品質なオーダーメイドフィラメントの受託開発・試作サービスを提供しています。
「自社の未利用資源を有効活用して、環境価値の高い新製品をつくりたい」「地域の木材を使ったストーリー性のあるプロダクトを開発したい」という企業・自治体の担当者様は、小ロットの試作から受託テスト出力まで一気通貫でサポートいたしますので、ぜひお気軽にmarui labまでご相談ください。

