3Dプリンターの素材とは?種類・特徴・選び方を解説|井上企画
読者
3Dプリンターの素材って、樹脂から新しいエコ素材までたくさんあってどれを選べばいいか迷うな…。自社製品に合う最適なマテリアルの特徴を網羅的に知りたい!
3Dプリンターの技術革新に伴い、造形に使用できる「素材(マテリアル)」の選択肢は急速に広がっています。試作段階のモックアップから、実用に耐えうる最終部品、さらには環境に配慮したサステナブルな新素材まで、用途に応じたマテリアル選定がプロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。
本記事では、3Dプリンターで使用される主要な素材の特徴をわかりやすく解説します。さらに、近年製造業やデザイナーから高い注目を集めている「ペレット式(FGF方式)」での素材選びの盲点や、天然木の質感を持つ最先端の木質系マテリアルまで、材木屋としての知見と素材開発の現場から得たリアルなノウハウを交えてお届けします。
- 3Dプリンターで使われる主要な樹脂マテリアルの特徴と違い
- 大型造形を可能にするペレット式(FGF方式)の素材選びの課題と対策
- 木粉配合マテリアルが持つ、反り抑制や耐熱性向上といった構造的メリット
- 自社の端材や間伐材をオリジナル素材へアップサイクルする具体的な手法
目次
3Dプリンター素材の種類
3Dプリンターで用いられる素材は、造形方式(出力タイプ)によって形状や特性が大きく異なります。まずは、市場で広く使われている代表的な3Dプリント用素材を3つのカテゴリーに分類して、それぞれの特徴を見ていきましょう。
定番の熱可塑性樹脂
熱をかけると溶け、冷やすと固まる特性を持つ「熱可塑性樹脂」は、熱溶解積層方式(FFF/FDM/MEX)などで最も一般的に普及している素材です。リール状に巻かれた「フィラメント」や、粒状の「ペレット」として供給されます。
| 素材名 | 主な特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| PLA(ポリ乳酸) | 植物由来で環境に優しく、熱収縮が小さいため造形が極めて安定している。 | 外観試作、フィギュア、大型モデル |
| ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) | 強度や耐衝撃性に優れ、研磨や塗装などの後加工がしやすいが、印刷時に反りやすい。 | 機能性試作、機械部品、治具 |
| ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート) | ABSに近い機械的強度を持ちながら、優れた耐候性(UV耐性)を誇る。 | 屋外設置部品、自動車外装パーツ |
これらはコストパフォーマンスが高く、プロダクト開発の初期検証において欠かせない定番マテリアルとなっています。
高精度な光硬化性樹脂
特定の波長の光(紫外線など)を照射することで液体から固体へと硬化する液体樹脂は、一般的に「レジン」と呼ばれ、光造形方式(SLA/DLP)などで使用されます。アクリル系やエポキシ系などの種類があり、非常に滑らかな表面仕上げと、微細なディテールの表現が可能です。
ただし、一般的に熱可塑性樹脂に比べると耐衝撃性や耐熱性が低く、経年劣化による脆化(ぜいか)が進みやすいため、主にデザイン確認用のモックアップや、非常に精密なフィッティング確認、あるいはジュエリーの鋳造用ワックス(ロストワックス)の代替といった用途に限定される傾向があります。
注目の環境配慮型素材
近年のサステナビリティ(持続可能性)への要求の高まりから、3Dプリントの世界でも環境配慮型マテリアルの開発が急速に進んでいます。これらは、従来の石油由来プラスチックの使用量を削減し、温室効果ガスの排出抑制や、サーキュラーエコノミー(地域資源循環)の実現に直接貢献する素材として、大手製造業や先進的なデザイナーから今もっとも選ばれ始めています。
代表的なものとして、再生プラスチック(リサイクルPLAなど)をベースにしたものや、地域の未利用資源である植物繊維、そして木材加工の過程で発生する「木粉」をプラスチックに高濃度に複合させた「木質系複合素材」などが挙げられます。これらの環境対応素材は、単に環境に優しいだけでなく、プラスチック単体にはない独自の「物理的メリット」を付与できるケースがあることから、マテリアル開発の新たなフロンティアとして注目を集めています。
ペレット式造形の最新動向
3Dプリンティングの世界において、従来のフィラメント(線状の材料)を使用する方式に加え、製造業や大型造形を中心に急速な広がりを見せているのが「ペレット式(FGF方式:Pellet Feed Screw Extrusion)」です。粒状の樹脂(ペレット)をダイレクトに溶融して吐出するため、造形スピードが圧倒的に早く、かつ大型の家具やプロダクトを一体成形できるという強力なメリットを持っています。
しかし、ペレット式プリンターを導入した造形メーカーやデザイナーが、実際の素材選びの段階で予期せぬ課題や失敗に直面するケースは少なくありません。ここでは、ペレット式造形における最新の素材選定の盲点と、その対策について詳しく解説します。
FGF方式が選ばれる理由
FGF方式(ペレット式)が選ばれる最大の理由は、材料コストの削減と造形速度の大幅な向上、 tender 「独自の複合素材(コンポジットマテリアル)を扱いやすい」という点にあります。フィラメント製造のプロセスを経ないため、原材料そのものの特性をダイレクトに造形物に反映させることができ、大型のプロダクトを数日、あるいは数時間で形にすることが可能です。
しかし、この「独自の素材を作れる」という自由度の高さこそが、素材選びの最初の罠(わな)になることがあります。
大型造形での素材選びの盲点
ペレット式プリンターのユーザー、特にオリジナルマテリアルを開発・使用して大型造形に挑戦したいと考える開発者の間で、よくある誤解が「どんな樹脂であっても、木粉などの天然繊維や他素材を混ぜ合わせれば3Dプリント素材にできる」という認識です。実は、これは大きな盲点です。
実際には、ベースとなる樹脂の種類によって「熱影響」の受けやすさが全く異なります。樹脂が溶融する温度や、スクリュー内で熱が加わる時間によって、混ぜ合わせた木粉が炭化(焦げ付き)してノズルを閉塞させたり、樹脂そのものの分子構造が破壊されて強度が著しく低下したりするのです。そのため、複合マテリアルを成功させるためには、熱影響を緻密に計算し、使える樹脂の種類をシビアに見極める高度な配合技術が不可欠となります。
読者
意意匠性を高めるために、透明な樹脂を使って大型造形をしたいと考えているのですが、素材を選ぶ際に何か気をつけるべきポイントはありますか?
担当者
透明樹脂は非常に人気がありますが、ペレット式での大型造形においては難易度が極めて高い素材の一つです。仕上がりにムラが出やすいため、事前の徹底した条件管理が必要になります。
プロダクトデザイナーや設計事務所から「透明感のある美しい大型構造物を作りたい」という要望をいただく機会は増えています。しかし、ペレット式の大型造形で透明樹脂(PETGやPCなど)を扱う場合、材料の「気泡」「乾燥状態」、 tender 「造形時の温度・速度条件」の3つが完璧に整わなければ、積層面に細かなムラや曇りが発生し、期待した透明度や美しい質感が得られません。
さらに、大型になればなるほど、外気温や内部の熱収縮によって、造形中の「反り」や「ひび割れ(デラミネーション)」のリスクが跳ね上がります。ペレット式造形の最新動向としては、単に好みの樹脂を選ぶだけでなく、「大型造形に耐えうる熱収縮の制御(材料への機能性添加物の配合)」と「出力プロセスの最適化」をセットでクリアしている素材を選ぶことが、プロジェクトを成功に導く最大の鍵となっています。
木質系新素材マテリアル
環境対応と高い意匠性を両立する次世代のマテリアルとして、今もっとも注目されているのが「木質系複合素材」です。これは従来のプラスチック樹脂に、木材の加工過程で発生する微細な「木粉」を高度な技術で混錬した素材です。
単なる「エコな代替品」に留まらず、製造業やプロダクトデザインの現場において、プラスチック単体にはない優れた物理的・構造的メリットをもたらすマテリアルとして、その評価が急速に高まっています。
天然木の質感と経年変化
多くの一般的な木質調フィラメントやペレットでは、均一な色合いを出すために化学的な人工着色剤が使用されることが少なくありません。しかし、化学着色された素材は時間が経っても色調が変わらず、どこか人工的な印象を与えてしまいがちです。
一方で、最先端の材料技術(marui labの材料開発など)を用いた木質系素材は、化学着色剤を一切排除し、配合される木粉そのものが持つ本来の色調、質感、香りを100%活かして製造されています。これにより、3Dプリントされた造形物でありながら、本物の木製家具や建築材と全く同じように、紫外線や空気と触れ合うことで「緩やかな経年変化(味わい深い色調の変化)」を楽しむことができます。デジタル技術で出力しながらも、アナログな温かみと上質な意匠性を空間にもたらすことができるのが、この素材の大きな魅力です。
marui labの材料技術がもたらす構造的メリット
従来の木質系素材には、「ノズル内部で木粉が焦げ付き(炭化)、流路を閉塞させてしまう」「造形中に収縮して反りやすい」といった、出力時の安定性に大きな課題がありました。しかし、材木屋としての精密な細胞構造の知見と、長年のプラスチック複合材研究が融合したことで、これらの課題は劇的に解消されています。
木粉が混ざっていると、家庭用や産業用の一般的な3Dプリンターではノズルが詰まりやすくなりませんか?
- A:木粉が含まれるため、1.0mm以上の極太ノズルでしか出力できない
- B:高度な微粉砕・混錬技術により、0.4mmの標準ノズルでも安定して長時間吐出できる
- C:詰まりを避けるために、出力速度を極限まで落とさなければならない
答えは B です
marui labの材料技術で製造された「marui filament」は、木粉が配合されているにもかかわらず、一般的な3Dプリンターの標準規格である「0.4mmノズル」で、目詰まりを起こすことなく長時間の安定した吐出が可能です。これにより、特別なカスタム機を用意することなく、高精度な造形を安定して行うことができます。
また、ペレット式(FGF方式)プリンターに対応する「marui pellet」においては、木粉を配合したことで物理的な特性がさらに向上しています。
| 特性項目 | 純粋なベース樹脂(100%) | 木粉配合ペレット(marui pellet) |
|---|---|---|
| 耐熱性 | 温度変化に弱く、軟化しやすい | 木粉の特性により耐熱性が向上する |
| 造形速度 | 標準速度での出力 | 耐熱性の向上により、配合前より造形速度を高速化できる |
| 反り・収縮 | 熱冷却時に大きく反りやすい | 内部の木粉が収縮を抑え、大型造形でも反りを抑制 |
このように、木粉の複合化は単なる環境配慮(エコ)のためのアプローチではありません。「耐熱性の向上」「造形速度のスピードアップ」「大型造形における反りの抑制」という、3Dプリントの生産性と品質を直接引き上げるための極めてロジカルな構造的メリットをもたらすマテリアルなのです。
失敗しない素材の選定方法
3Dプリンター用のマテリアルは、樹脂単体から高機能な複合素材まで多岐にわたるため、選定基準を誤ると「出力後に強度が足りず破損した」「造形サイズに対して熱収縮が大きく、途中で剥がれてしまった」といった致命的な失敗を招きます。プロジェクトを成功させるためには、感覚ではなく、明確なロジカルをもとに素材を絞り込む必要があります。
用途と強度のバランス
素材を選ぶ際の第一歩は、その造形物が「どのフェーズで使用されるか」を定義することです。外観のデザインや形状のみを確認したい「意匠試作」の段階であれば、積層面が滑らかで微細な表現が得意な光硬化性樹脂(レジン)や、寸法安定性が高く安価なPLA樹脂が最適です。
しかし、実際にネジ締めを行ったり、負荷がかかる環境でテストを行ったりする「機能性試作」や「最終部品」として使用する場合は、耐衝撃性に優れたABSやASA、あるいはナイロン樹脂が必要不可欠となります。さらに、強度だけでなく「環境負荷の低減」や「サステナブルなストーリー性」を製品に付与したい場合は、ベース樹脂の機械的強度を維持しつつ、未利用資源を配合した木質系などの最先端複合マテリアルを選択することが、現代の製品開発において非常に強力な選択肢となります。
出力方式との相性
どれほど優れた特性を持つマテリアルであっても、自社が保有、あるいは委託する3Dプリンターの「造形方式」と相性が悪ければ、そのポテンシャルを発揮することはできません。特に、一般的な「フィラメント方式(FFF/FDM)」と、大型造形に用いられる「ペレット式(FGF方式)」では、流動性や熱影響の受け方が根本から異なります。
| 選定のチェックポイント | フィラメント方式(小〜中型・高精細) | ペレット方式(大型・高速出力) |
|---|---|---|
| サイズと熱収縮 | サイズが小さいため反りの影響を抑えやすい。 | 容積が大きいため熱収縮の影響が直撃する。反り抑制効果のある複合素材(木粉配合など)が極めて有効。 |
| 材料の熱履歴 | 一度リール状に加工された安定マテリアルを使用。 | スクリュー内でダイレクトに溶融するため、熱影響による炭化や強度低下のリスクを考慮する必要がある。 |
| ノズル径の相性 | 0.4mmなどの微細ノズルが主流。粒径の均一な材料が必須。 | 3mm〜8mmなどの太ノズルが主流。溶融スピードと流動性のコントロールが鍵。 |
このように、単純な「硬さ」や「価格」だけで選ぶのではなく、造形物のスケール感と出力システム、さらには熱による材料の挙動までをトータルで計算して素材を選定することが、出力エラーを未然に防ぎ、開発コストを最小限に抑えるための鉄則です。
オリジナル素材の試作手法
製造業の環境対応(SDGs)や、地方自治体が推進する「地域の未利用材・間伐材の利活用」において、自社独自の廃棄端材や地域資源を3Dプリンターの素材へ生まれ変わらせる「アップサイクル」への関心が世界的に高まっています。
しかし、オリジナル素材の開発は容易ではありません。材料を支給してフィラメントやペレットの製造を外部に依頼しても、いざ3Dプリンターに投入すると「ノズルが詰まって出力できない」「強度が足りず形にならない」といったトラブルが多発し、開発が頓挫してしまうケースが後を絶たないのが実情です。
端材をアップサイクルする価値
地域の街路樹、家具製造時の木片、建築現場の間伐材など、これまでは廃棄・焼却処分するしかなかった「端材」を回収し、高度な微粉砕技術を用いてオリジナルのペレットやフィラメントへアップサイクルする試みが、今多くの感動を生んでいます。
単にエコ素材を作るだけでなく、そのオリジナル素材を使って「自社オフィスの家具」や「地域の記念モニュメント」などへ大型一体造形して納品するまでのストーリー性は、企業のブランディングや自治体の6次産業化において極めて高い付加価値を生み出します。ストーリーが可視化されることで、関わる人々に深い感動を与えることができるのです。
marui labの受託試作サービス
世の中には「フィラメントやペレットの製造(混錬)」だけを請け負う会社はありますが、実際に「その材料を使って木粉高配合で3Dプリント造形ができるか」までを一貫して引き受け、検証できる企業はほとんど存在しません。そのため、多くの開発担当者が試作難民となっています。
marui lab(マルイラボ)の圧倒的な強み:材料開発から受託造形までの一貫検証体制
自社で「marui pellet」「marui filament」という高度な木質系素材をゼロから研究開発しているからこそ、外部から持ち込まれた多様な木粉や端材を応用し、最適に製造・混錬する高い応用技術が備わっています。さらに、材料を作るだけでなく、自社の3Dプリンターを用いて「実際に製品として正しく造形できるか」のプロセスまで一貫して検証します。
この「マテリアル開発」と「出力・造形」の両方の現場ノウハウを完全に内製化しているため、外部への依頼にありがちな「材料はできたけれど、プリンター側で全く使えなかった」という最悪の結果に陥ることがありません。木粉を入れての造形可否の確認から、実用に耐えうる品質の担保まで、ワンストップで伴走するからこそ、多くの企業や自治体から選ばれ、高い信頼を獲得しています。
「自社の廃棄製品を3Dプリント素材化したい」「間伐材を用いたオリジナルペレットで家具を造形したい」など、素材開発から実際の試作造形まで一貫したサポートをお探しですか?
marui labでは、独自の混錬・材料技術と大型FGFプリンターを駆使し、使えないリスクをゼロにする確実な受託試作サービスを提供しています。まずはお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
まとめ
3Dプリンター用の素材(マテリアル)は、定番のABSやPLA、高精度な光硬化性樹脂から、環境配慮と高機能を両立する最新の木質系素材まで非常に多様化しています。特に、大型造形と高速出力が可能な「ペレット式(FGF方式)」の普及により、マテリアル選定がプロダクト開発や地方創生の成否を分ける重要なファクターとなっています。
本記事の重要なポイントは以下の通りです。
- 3Dプリンターの素材は、用途(デザイン試作か機能性試作・最終部品か)と出力方式(フィラメントかペレットか)に合わせて最適に選定する必要がある。
- ペレット式造形におけるオリジナルマテリアル開発では、樹脂の熱影響を緻密に計算し、炭化やノズル詰まりを起こさないシビアな配合技術が求められる。
- 天然の木粉を高度に融合させた木質系複合素材(marui pellet / marui filament)は、環境配慮だけでなく、「耐熱性向上」「造形速度の高速化」「大型出力時の反り抑制」という極めてロジカルな構造的メリットをもたらす。
- 自社の廃棄端材や地域の資源を新マテリアルへ生まれ変わらせるには、材料の混錬・製造から、実際の3Dプリンターでの出力テストまでを一貫して検証できる体制が成功の鍵となる。
株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab」では、大川の地で培った材木屋としての深い知見と最先端のデジタルファブリケーション技術を融合させ、材料開発から受託造形までをワンストップでサポートしています。「使えない素材」を無くし、企業の廃棄コスト削減と新たな価値創造(ストーリー性の付与)を確実に実現いたします。
自社独自の端材や地域の未利用材を活用したオリジナル素材の開発、または高精度な木質3Dプリント試作をご検討中の方は、ぜひお気軽にmarui labまでご相談ください。

