間伐材とは?主伐材との違いやメリット・課題から最新3Dプリント活用まで解説
間伐材(かんばつざい)とは、森林の成長過程で密集しすぎた樹木を間引く(間伐する)作業によって産出される木材のことです。
「SDGsや環境配慮の観点から、建築・空間デザインや新製品開発に間伐材を取り入れたい」とお考えの設計士様やプロダクト開発担当者様が増えています。しかし同時に、「間伐材と普通の木材(主伐材)は何が違うのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」といった基礎知識や、実際の活用におけるハードルに直面するケースも少なくありません。
本記事では、大正元年創業の老舗材木店を母体とし、伝統木工と先進のデジタルファブリケーション(3Dプリント技術)を融合させる株式会社井上企画が、間伐材の基礎知識から必要性、従来の木工加工における課題、探していた3Dプリント技術を活用した革新的な最新アップサイクル手法までをわかりやすく解説します。
- 間伐材の定義と、森林保全において間伐が必要とされる背景
- 間伐材の種類(定性間伐・定量間伐)と主伐材との違い
- 従来の木工・製材加工における間伐材のデメリットと現実的な課題
- 3Dプリント技術(木質フィラメント・ペレット)を活用した新しい間伐材の利活用手法
目次
間伐材とは?必要性と生み出される背景
人工林(杉やヒノキなど)は、苗木を高密度で植えることから始まり、木々が成長するにつれて太陽光や栄養の奪い合いが発生するため、適切に間引きを行わなければ健全な森を維持できません。この「間引き」の過程で切り倒された木が間伐材です。
間伐(木の間引き)が行われる理由と環境上のメリット
間伐を行わずに森林を放置すると、樹木の枝葉が重なり合い、地表に太陽光が届かなくなります。その結果、以下のような深刻な環境悪化を引き起こす原因となります。
- 下草が生えなくなり、土壌保持力が低下して土砂崩れのリスクが高まる
- 木々がひょろひょろと細く育ち(線香林化)、台風や積雪で倒れやすくなる
- 光合成の効率が落ち、森林全体のCO2吸収能力が低下する
適切に間伐を行うことで、残された木々に日光が行き渡り、幹が太く健やかに成長します。また、根が深く張ることで土壌が安定し、災害に強い健全な森林環境が保たれます。
主伐材との違いと間伐材の種類(定性間伐・定量間伐)
林業における木材の採出には、大きく分けて「主伐(しゅばつ)」と「間伐(かんばつ)」があります。
| 区分 | 概要 | 主な特徴と用途 |
|---|---|---|
| 主伐材 | 収穫期(樹齢50年以上など)を迎えた森林を全面的または選択的に伐採した木材 | 幹が太くまっすぐで品質が安定しており、建築用構造材や大型家具天板などに利用される |
| 間伐材 | 森林の育成段階で、成長を促すために間引かれた木材 | 幹が細く、曲がりや曲率が大きい傾向にある。紙・パルプ原料やバイオマス燃料、小物の材料などに使われる |
なお、間伐の方法には目的や選定基準に応じて大きく2つのアプローチが存在します。
1つ目は「定性間伐(ていせいかんばつ)」です。生育の悪い木や傷ついた木(劣勢木)を優先して間引く「下層間伐」や、逆に質の良い木を育てるために競合する上位の木を間引く「上層間伐」など、木の品質を見極めて選定します。
2つ目は「定量間伐(ていりょうかんばつ)」です。木の品質に関わらず、森林全体の本数や蓄積量(一定の割合・本数)を目安として機械的に間引く手法です。
間伐材の調達・加工に関するよくある誤解
間伐材の活用を検討される設計事務所様や製品開発担当者様から、粉砕や一次加工について「樹皮を取り除いたり、かなり細かく砕いておかないと受け入れてもらえないのではないか」というご質問をいただくことがあります。
読者
間伐材をリサイクルや粉砕加工に回す場合、事前の皮むきや細かい切り分け作業が必要でしょうか?手間がかかりそうですが……
担当者
いいえ、必ずしもきれいに皮をむく必要はありません!粉砕機の投入口に入るサイズ(約1m程度)まで短くカットされていれば、樹皮や葉がついた状態のままでも粉砕加工が可能です。
事前の高度な前処理作業を前提とせずとも活用へとつなげる選択肢が存在することを理解しておくと、地域の間伐材を活用した企画の実現性が大きく広がります。
間伐材の利活用がSDGsや脱炭素に貢献する理由
近年、建設・インテリア業界やメーカーの製品開発において「間伐材の積極採用」が強く推進されている背景には、地球温暖化対策やSDGs(持続可能な開発目標)の達成に対する直接的な貢献があります。
単なる「環境に優しいイメージ」にとどまらず、間伐材を活用することが社会にどのような具体的インパクトをもたらすのか、大きく2つの観点から解説します。
森林保全とCO2吸収能力の向上(カーボンニュートラル)
樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、幹や枝に炭素として蓄積します。しかし、樹齢を重ねて成長が鈍化したり、手入れが届かず枝葉が混み合って日光が当たらない状態になると、CO2の吸収効率は大きく低下してしまいます。
適切な間伐によって光を採り入れ、森林全体の若返りや健全な生育を促すことは、日本全体が掲げる「2050年カーボンニュートラル」やパリ協定の目標達成に向けたCO2吸収源の確保において非常に重要な役割を果たしています。
さらに、伐採された間伐材を焼却・廃棄せず、製品や建材として長期間利用し続けることで、樹木の中に固定された炭素を大気中に放出させず閉じ込め続ける(炭素固定)効果も期待できます。
放置される「林地残材(切り捨て間伐)」の課題
森林保全において間伐が必要不可欠である一方、大きな社会課題となっているのが「林地残材(切り捨て間伐)」の放置です。
間伐を行っても、山から切り出した木材を麓まで搬出・輸送するコストが木材の販売価格を上回ってしまう場合、伐採した木々をそのまま山の中に放置せざるを得ない現実(切り捨て間伐)が存在します。
放置された林地残材は以下のような危険を引き起こします。
- 豪雨時に流出して沢を塞ぎ、倒木混じりの土砂災害(流木被害)を拡大させる
- 病害虫の発生源となり、周辺の健全な樹木へ被害が拡大する
- 森林所有者の管理意欲を低下させ、所有者不明の「手入れの届かない森林」を増加させる
つまり、間伐材を単に切り倒すだけでなく、「産業資源として地域外へ流通させ、しっかり活用する循環ルート」を構築することこそが、真の環境保全と地域防災につながるのです。
間伐材活用の現状とデメリット・課題
脱炭素社会の実現やSDGsの達成に向けて「間伐材を使いたい」という企業・施主のニーズが高まる一方で、実際の製品開発や空間デザインの現場では、間伐材の採用が見送られてしまうケースが少なくありません。
その背景には、従来の製材加工や木工技術では解決が難しい、間伐材特有の構造的なデメリットと流通上の課題が存在します。
形状の不揃い・細径による木工加工の制限とコスト高
間伐材の最大の課題は、「幹が細く(細径木)、曲がりや曲率が大きい」点にあります。
主伐材のように太くまっすぐな無垢板を切り出すことが難しいため、建築の構造材や大型家具のカウンター天板といった用途にはそのまま使用できません。
また、直線的な角材や板材へ製材しようとすると、削り落とされる加工屑(端材)の割合が非常に高くなり、「歩留まり(ぶどまり)が著しく悪化する」という問題が生じます。
歩留まりが悪いということは、必要な製品サイズを得るために大量の原木を消費しなければならず、結果として製造コストの高騰を招いてしまいます。
流通量の不安定さと搬出・運搬コストの壁
2つ目の課題は、産業資源としての流通量の不安定さと、それに伴う物流コストの高さです。
間伐作業は森林の生育状況や地域の施業計画に合わせて実施されるため、年間を通じて欲しい樹種・サイズ・量の木材が安定して市場に供給されるとは限りません。一定の品質と数量を継続して調達したいプロダクトメーカーや量産家具メーカーにとって、この供給の波は大きな参入障壁となります。
さらに、山深い伐採現場から重機を入れて切り出し、トラックで麓や製材工場まで運び出すには多大な燃料費・人件費(搬出コスト)がかかります。山元での木材価格に対して輸送費の割合が高くなりすぎることが、間伐材の利活用が進まない大きな要因となっています。
従来の木工加工において、間伐材の活用が難しい一番の理由はどれでしょうか?
- 木材としての耐久性や強度が不足しているから
- 幹が細く不揃いなため、製材時の歩留まりが悪くコストがかさむから
- 木目のデザインが美しくないから
答えは B です
間伐材も適切に乾燥・加工すれば木材としての十分な品質を備えています。しかし、幹の細さや曲がりによって無垢材として切り出せる割合(歩留まり)が低く、搬出費用も含めたコスト高が最大の壁となっていました。
3Dプリント技術が開く間伐材の新しいアップサイクル
「形状が不揃い」「幹が細く無垢材として切り出せない」「加工屑が多く歩留まりが悪い」といった間伐材の課題に対し、全く新しいアプローチでブレイクスルーをもたらすのが、最新のデジタルファブリケーション(3Dプリント技術)です。
大正元年創業の歴史を持つ製材所を母体とする株式会社井上企画では、素材開発事業部「marui lab(マルイラボ)」を中心に、未利用木材や間伐材を次世代のエコマテリアルへと生まれ変わらせる技術開発に取り組んでいます。
間伐材を微粉砕・ペレット化して立体造形に活用する仕組み
3Dプリント技術を用いたアップサイクルの最大の特徴は、「木材の元のサイズや形状、曲がりに一切左右されない」という点にあります。
山から搬出された間伐材を投入口サイズ(約1m程度)までカットし、工業用装置で微粉砕して木粉化。そこに再生樹脂などを混錬して3Dプリンター用素材(「marui pellet」や「marui filament」)へと加工します。
粉末状に加工してから成形を行うため、幹が細い木や変形した木、さらには樹皮や葉が含まれた状態の間伐材であっても、あますことなく100%近く活用することが可能となります。
従来の木工加工では難しかった自由なデザインと小ロット対応
木質ペレットやフィラメントを用いた3Dプリント造形には、従来の木工刃物による削り出し加工にはない数々のメリットが存在します。
- 複雑な三次曲面や中空構造など、木工加工では不可能なデザインを実現
- 金型が不要なため、特注品や小ロット製品、試作品を低コストかつ迅速に製作可能
- 必要な分だけ材料を吐出して造形するため、削り屑(ごみ)がほとんど発生しない
化学的な人工着色剤を使用せず、木粉本来の色調や香りを活かして成形するため、完成した造形物は本物の木製品同様に経年変化の味わいやぬくもりを楽しむことができます。
地域の間伐材を活かしたオリジナル素材・特注プロダクト開発
井上企画では、自社工場での製造にとどまらず、外部企業様や自治体様向けに「地域の間伐材や未利用材をお預かりしてオリジナル素材(ペレット・フィラメント)化し、3Dプリント造形までを一貫して行う試作受託ソリューション」を展開しています。
例えば、「特定の地域で発生した間伐材を活用した店舗内装の特注什器」や、「記念品・ノベルティグッズの開発」など、ストーリー性と高い環境価値を備えた独自のプロダクト開発が可能です。
▶関連記事:【最先端】間伐材の使い道を紹介!3Dプリントが変える新たなアップサイクル
▶関連記事:【設計・店舗担当必見】間伐材家具のメリット・反り対策から3Dプリント活用まで解説
▶関連記事:伐材ノベルティの新常識|端材を循環させる木質3Dプリント活用法
まとめ:間伐材の価値を高めるサステナブルな素材選び
脱炭素社会の実現やSDGsの達成に向けて、間伐材をはじめとする地域木材の利活用は今後ますます重要性を増していきます。
本記事のポイントを改めて整理します。
- 間伐材は森林の健やかな成長とCO2吸収能力を保つために不可欠な資源である
- 事前の皮むき作業がなくても、投入口サイズ(約1m)にカットすれば粉砕・活用が可能
- 従来の木工加工では細径・曲がりによる歩留まりの悪さやコスト高が課題となっていた
- 3Dプリント技術(marui pellet / marui filament)なら、木の形状やサイズに左右されず自由なアップサイクルが可能
「地域の間伐材や端材を活用したオリジナルの新製品を開発したい」「環境に配慮した特注什器や空間デザインを企画しているが、従来の製材ではコストや形状の制約で諦めていた」といったお悩みがございましたら、ぜひ一度株式会社井上企画にご相談ください。
大川の伝統製材ノウハウと先進の3Dプリント技術を掛け合わせ、お客様の想いを形にする最適なソリューションをご提案いたします。

