3Dプリント内装の最前線!デザイン事例から試作・受託造形の手順までプロが解説
近年、建築・インテリア業界で急速に注目を集めている「3Dプリント技術」。これまでにない有機的なデザインや、自由な曲面を用いた空間演出が可能になることから、商業施設やオフィス、店舗の内装デザインへの導入を検討する設計者やデザイナーが増えています。
しかし、一般的なフィラメント式の3Dプリンターでは、店舗用の什器や椅子、大型オブジェなどに求められる「強度」や「耐久性」を確保することが難しく、実務への採用を断念してしまうケースも少なくありません。また、「積層痕(プリントの筋)が目立って美観を損ねるのではないか」「プラスチック特有の質感が空間に馴染まないのではないか」という懸念の声もよく聞かれます。
そこで本記事では、強度とデザイン性を両立する最新の「ペレット式大型3Dプリンター」の可能性に着目し、国内外の先進的な内装事例から、実務での懸念を解消する試作・製造のプロセスまでをプロの視点で徹底解説します。単なるデジタル造形に留まらない、素材にストーリーを込めた次世代の内装デザインのヒントを見つけてみてください。
読者
店舗の特注什器に3Dプリントを使いたいけど、強度が心配だし、どこに受託造形を頼めばいいかわからないな……。
担当者
そうですよね。実は内装材や大型家具の造形には、細い糸を溶かす「フィラメント式」ではなく、粒状の樹脂をダイレクトに押し出す「ペレット式」の大型プリンターが不可欠なんです。その理由と、実務での失敗を防ぐステップを分かりやすく解説します!
- 内装デザインにおける「フィラメント式」と「ペレット式」の決定的な違い
- 国内外の先進的な3Dプリント内装・大型特注家具の最新事例
- 強度試験や大川の職人ネットワークを活かした、実務で失敗しない造形・後加工プロセス
- 地域資源や工場端材をアップサイクルし、空間にストーリーを持たせる方法
目次
1. 3Dプリントが変える商業施設・店舗の内装デザイン
これまでの商業施設や店舗の内装、あるいはオフィスのディスプレイにおいて、複雑な有機的形状や、流れるような曲面を持つ什器・壁面パネルを再現するには、莫大な型代や、熟練の職人による手作業での長時間の削り出し・成形加工が必要でした。しかし、デジタルファブリケーション(3Dプリント技術)の進化は、これらのデザイン制約を過去のものにしつつあります。
1-1. 内装・家具の製造には「ペレット式プリンター」が不可欠な理由
3Dプリンターで内装材や家具といった「人が触れる」「荷重がかかる」大型の構造物を作る際、最も重要となるのが造形方式の選択です。一般的に普及しているデスクトップ型の3Dプリンターは、リールに巻かれた細いプラスチックの紐を溶かして積み上げる「フィラメント式(FDM)」が主流です。しかし、フィラメント式は出力サイズに制限があるだけでなく、ノズル径が細いため、積層にかかる時間が膨大になり、結果として層と層の接着強度が不足しやすくなります。これでは、店舗のカウンターや椅子、ディスプレイ用の大型オブジェに求められる強度を満たせません。
これに対し、内装プロジェクトの現場で真価を発揮するのが「ペレット式3Dプリンター」です。ペレット式は、プラスチックの原材料である粒状の「ペレット」を直接熱で溶かし、太いノズルからダイレクトに押し出して造形します。これにより、以下のような内装製造において圧倒的な優位性を誇ります。
- 圧倒的な造形スピードと強度:太いノズル(3〜8mmなど)から一気に樹脂を吐出するため、造形時間を劇的に短縮できます。また、一度に押し出される熱可塑性樹脂の体積が大きいため、冷え固まる前の層同士が強力に熱融着し、構造物として極めて高い強度を発揮します。
- 多様な新素材への対応:フィラメント形状に加工するのが難しい、天然の木粉を多く配合したサステナブルな複合材料であっても、ペレット状であれば安定してダイレクトに出力・造形することが可能です。
1-2. 海外で注目されるサステナブルな内装材のトレンド
現在、世界的な建築・内装デザインのトレンドとして、単に美しい形状を作るだけでなく、「その空間がどのような素材で構成され、どのような社会的ストーリーを持っているか」が厳しく問われるようになっています。特に環境意識の高いヨーロッパを中心とした海外プロジェクトでは、石油由来のプラスチックをそのまま使うのではなく、生分解性プラスチック(PLAなど)に「廃棄予定だった自然資源」を混ぜ合わせた、サーキュラーエコノミー(資源循環)型の3Dプリント内装パネルや什器の導入が主流になりつつあります。
例えば、海外ではオレンジの皮を配合したバイオプラスチックで内装パネルをプリントした事例など、地域の廃棄資源を3Dプリント技術によって美しいデザインへと昇華させる試みが注目を集めています。このように、従来の木工加工や樹脂成形では不可能だった「複雑なデザインの具現化」と「環境への配慮(ストーリー性の付与)」を同時に達成できる点が、3Dプリント内装がプロの設計者から選ばれている最大の理由です。
2. 【国内外】3Dプリンターを活用した革新的な内装事例
ペレット式大型3Dプリンターの登場により、内装デザインの可能性は机上の空論から現実の空間へと落とし込めるようになりました。ここでは、実際にどのような内装・造形物が作られているのか、国内外の具体的な事例を見ていきましょう。
2-1. 材料からこだわる特注家具とオフィスオブジェの事例
国内の先進的な事例として注目されているのが、オフィスのエントランスやミーティングスペースに設置される特注の大型家具、そして空間の象徴となる独創的なオブジェの製造です。これらは従来の木工加工では切り出しが難しかった滑らかな3次元曲面を持っており、来訪者に強烈なインパクトと先進的な企業イメージを与えます。
さらに、こうした特注家具のプロジェクトでは、単に新しい形状を作るだけでなく、「材料そのものにストーリーを持たせる」というアプローチが極めて重視されています。例えば、クライアント自身の工場から排出された木材の端材や加工屑、あるいはプロジェクトが位置する地域の間伐材を回収・微粉砕し、ペレットへとアップサイクルして造形する試みです。自社の廃棄資源が美しいオフィス家具へと生まれ変わるプロセスそのものが、企業のSDGsへの取り組みを体現する強力なストーリーとなっています。
2-2. 展示会を彩る革新的な壁面パネルと家具
短期間でブランドの世界観を表現し、多くの来場者の目を引く必要がある「展示会」のブースデザインにおいても、3Dプリント技術が存分に活かされています。特に、ブースの背景となる大型の壁面パネルや、そこに配置される特注什器の製造です。
ペレット式大型3Dプリンターであれば、数メートル規模の壁面パーツであっても、データからダイレクトかつスピーディーに出力可能です。従来の造作壁のように大量の木材を使い捨てにするのではなく、環境に配慮したバイオマス素材を用いて造形することで、サステナブルなブランド姿勢を展示会という公の場でリアルに発信することができます。
また、パネルについては、フィラメント式で多くのパーツを組み合わせることによって、大きな面積の意匠的な装飾をすることも可能です。
3. 内装プロジェクトに3Dプリントを導入する3つのメリット
店舗や商業施設の内装設計において、従来の工法(木工造作や金物、FRP成形など)と比較した際、ペレット式大型3Dプリンターを導入することには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。実務に直結する3つのポイントを整理します。
3-1. メリット1:従来の木工加工では難しい「有機的デザイン」の実現
木材は非常に優れた内装材ですが、直線や緩やかな2次元の曲面に加工するのが基本であり、複雑にうねるような3次元の有機的形状を表現しようとすると、莫大な時間とコスト、結構な熟練の職人技が必要でした。3Dプリンターであれば、3D CADや3Dモデリングソフトで作成した複雑なデータをそのまま空間に描き出すように出力できるため、これまでのデザインの限界を大きく突破することができます。
3-2. メリット2:素材からこだわる「ストーリー性」で空間の価値を向上
地域材や自社の工場端材を混ぜ込んだオリジナルの「木質ペレット」を材料に使える点は、ペレット式3Dプリンターならではの大きなメリットです。人工的な着色剤を使わず、配合する木粉そのものの色や質感、香りを活かして造形された家具や内装材は、本物の木材と同様に、年月を経て紫外線に触れることで緩やかに色調が変化していく「経年変化の味わい」を楽しむことができます。「どこにでもあるプラスチック製品」とは一線を画す、背景に深い物語を持ったサステナブルな空間価値をクライアントに提案できます。
3-3. メリット3:データさえあれば小ロット・特注品も短納期で製造可能
通常、樹脂で複雑な形状を大量に作る場合は「金型」を起こす必要があり、これには数百万円のコストと数ヶ月の準備期間がかかります。そのため、店舗に1つだけ設置するような「特注のカウンター」や「数脚だけの椅子」といった小ロット生産には全く向きませんでした。3Dプリンターは型を必要としない「オンデマンド製造」であるため、データさえ完成すれば、1点物の特注品であっても無駄なコストをかけず、スムーズに出力プロセスへと移行して短納期でカタチにすることが可能です。
読者
デザインの自由度やストーリー性は魅力的だな!でも、いざ実務で使うとなると「椅子の強度は本当に大丈夫なのか」とか「積層痕のガタガタした見た目が安っぽく見えないか」という部分がやっぱり不安かも……。
担当者
まさにそこが設計者様が一番悩まれるポイントです。次の章では、こうした「強度」「美観」「触り心地」といった実務でのリアルな懸念を、日本の製造現場がどのようにクリアしているのか、具体的な解決策を詳しく解説します!
4. 実務での失敗を防ぐ造形・検証プロセス
どれだけ3Dプリント内装の可能性が魅力的であっても、プロの設計実務においては「納品後のトラブル」を最も避けなければなりません。人が座る椅子や、物を置くカウンターにおいて、強度不足による破損や、美観を損ねる仕上げの粗さは致命傷になるからです。ここでは、こうした現場の懸念をクリアし、プロジェクトを確実に成功へ導くための具体的な検証プロセスを解説します。
4-1. 家具の強度試験クリアという「品質への裏付け」
「3Dプリンターで作った家具は、本当に人が乗っても壊れないのか?」という疑問に対し、最も確実な回答となるのが客観的な強度試験の実施です。井上企画の受託造形やプロジェクトでは、必要に応じ、家具の強度試験の依頼を実施しています。
また、自社のmarui pelletについては、ペレット式プリンターによる家具形状の分類を行い、独自の強度データを蓄積し、事前にデザインに反映できるように取組を行っています
これにより、商業施設やオフィスといった不特定多数の人が利用する過酷な環境であっても、従来の木製家具と変わらない安全性を担保した状態で、自信を持って空間にインストールすることが可能になります。
4-2. 積層痕を「美観」に変えるデザインの工夫
3Dプリント特有の「積層痕(1層ずつ積み上げた跡)」をデザインの障害と捉えるのではなく、あえて活かす、あるいはコントロールするという視点も重要です。造形時の出力条件(吐出量、温度、スピードなど)を専門の技術スタッフが細かく調整し、材料(ペレット)の性質を最大限に引き出すことで、積層痕の乱れがない美しい均一なラインを描くことができます。
さらに、表面にあらかじめ規則的な「波のような模様(ウェーブ)」を施した3Dデータを作成して出力する手法も効果的です(参考:PrintWeave Stool(プリントウィーブ スツール))。このように視覚的な陰影をあえてデザインとして組み込むことで、積層痕特有のガタつきを感じさせず、むしろデジタルファブリケーションでしか表現できない先進的で美しいテクスチャーへと昇華させることができます。
4-3. 「大川の木工ネットワーク」による緻密な後加工と肌触りの向上
木粉が配合されたサステナブル素材(木質ペレット)で椅子などの家具をプリントした場合、設計者が次に懸念するのが「座ったときに衣類が引っかからないか」「肌触りは滑らかか」という点です。3Dプリンターから出力したままの状態では、どうしても微細な毛羽立ちやざらつきが残ることがあります。
ここで大きな強みとなるのが、日本有数の家具の産地・福岡県大川市が誇る職人ネットワークの存在です。高度な造形技術を持つ3Dプリント現場と、大川の熟練した研磨・塗装業者が密に連携し、出力後の造形物に対して最適なサンドペーパーによる研磨(サンディング)や、質感を損なわないオイル塗装・ウレタン塗装などの後加工をすることも可能です。最先端のデジタル造形技術に、大川の伝統的なアナログの職人技(手仕事)を掛け合わせることで、衣類の引っかかりを防ぎ、高級家具にふさわしい極上の手触りと美観を実現しています。
4-4. リスクを最小限に抑える「造形サービス」の活用
いきなり数メートル規模の大型造形を本番出力するのは、コスト面でもデータ検証の面でもリスクが伴います。そこで推奨されるのが、事前に小ロットで検証を行える造形サービスの活用です。
maruipelletを使用することで、材料の製造を行うハードルを下げ、スピーディに試作を行うことが可能です。
この事前のステップを踏むことで、本番のペレット式大型3Dプリンターでの本出力において、造形エラーによる失敗を徹底的に防ぐことができ、オーダーの材料による特性の違いに集中して、本番の製造を行うことができます。
5. まとめ:3Dプリントで未来の内装空間を具現化するために
3Dプリント技術を活用した内装デザインや特注家具の製造は、単に「珍しい形状を作る」という段階を終え、実務における強度や美観、そして「素材にストーリーを込める」という高付加価値な空間創造のフェーズへと進化しています。
- 大型家具の製造には、強度とスピードに優れたペレット式3Dプリンターの選定が必須であること
- 自社の工場端材や思い入れのある地域材をアップサイクルし、経年変化をも楽しめる唯一無二のストーリー性を付与できること
- 客観的な強度試験のクリアや、大川の職人ネットワークによる研磨・塗装加工を組み合わせることで、プロの実務に耐えうる高いクオリティと滑らかな手触りが実現できること
株式会社井上企画の素材開発事業部「marui lab」では、大型3Dプリンターによる特注造形のご相談から、独自の木材端材・間伐材を活用した「フィラメント試作サービス(受託テスト出力)」まで、内装設計者・デザイナーの皆様のこだわりをカタチにする一貫したサポートを行っています。デザインの可能性や素材のアップサイクルについて、まずはお気軽にお問い合わせください。

