伐採した木を活用するには?製材から3Dプリントまで、4つのアップサイクル手法を解説
はじめに:その木に、新たな役割を与えるという選択
新築、再開発、インフラ整備。新たな価値を創造する建設プロジェクトの裏側で、これまでその土地の歴史を見守ってきた木々が、新たな役割を待っています。
プロジェクトの進行上、やむなく伐採された木々。それらは多くの場合、処理コストをかけて処分されてきました。しかし、もし、その一本一本が持つ物語や個性を、新たな形でプロジェクトに活かすことができるとしたら?
思い出の詰まった桜、地域で親しまれたケヤキ並木。そうした木々を、ただの「伐採木」としてではなく、その土地の記憶を未来へ繋ぐ「貴重な資源」として捉え直す。井上企画は、そんな新しい価値創造の選択肢を提案します。
本記事では、建設現場で発生する伐採木を、価値あるプロダクトへと生まれ変わらせるための、具体的な4つのアップサイクル手法を解説します。伝統的な木工技術から最先端の3Dプリント技術まで、あらゆる選択肢を駆使し、伐採木に新たな命を吹き込む。私たちのワンストップ・ソリューションの全貌をご紹介します。
第1章:なぜ、現場の木は「使えない」のか? – 建設発生木材が抱える3つの課題
そもそも、なぜ現場で伐採された木は、そのまま活用されずに捨てられてしまうのでしょうか。そこには、建設業界が長年抱えてきた、根深い3つの課題が存在します。
課題1:規格外の形状と樹種
家具や建材として使われる木材は、そのほとんどが「製材」を目的として育てられた、真っ直ぐで太さの揃った針葉樹です。一方、開発現場で伐採されるのは、公園のシンボルツリーや街路樹、個人邸の庭木など、多種多様な広葉樹が中心です。それらは、一本一本が異なる形に枝分かれし、曲がりくねり、太さもまばら。そもそも家具用材としては一般的でない樹種も多く、伝統的な製材ラインに乗せることが極めて困難なのです。
課題2:法的な制約と処理コスト
建設工事に伴って発生する伐採木は、「建設リサイクル法」の対象となり、その木くずは「産業廃棄物」として扱われます 。これは、排出事業者に適正な処理を義務付けるものであり、結果として収集運搬や焼却・埋立のための費用、すなわち「処理コスト」が発生します。プロジェクト規模が大きくなるほど、このコストは無視できない負担となっていました。
課題3:高いリサイクル率の裏側
日本の建設廃棄物における再資源化・縮減率は97%を超え、世界的に見ても極めて高い水準にあります 。しかし、その内実を見ると、建設発生木材の多くは細かく砕かれ、バイオマス発電の燃料チップや製紙原料として利用される「サーマルリサイクル(熱回収)」や「カスケードリサイクル」が主流です 。もちろん、それらも重要なリサイクル手法ですが、木が本来持っていた素材としての価値や物語は失われてしまいます。より付加価値の高い製品へと再生させる「マテリアルリサイクル」の割合は、依然として低いのが現状なのです。
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課題
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内容
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影響
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規格の問題
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樹種・形状・サイズがバラバラで、従来の製材・加工ラインに乗らない。
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材料として活用できず、廃棄される原因となる。
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コストの問題
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産業廃棄物として扱われるため、収集運搬や焼却に多額の費用が発生する。
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プロジェクト全体のコストを圧迫し、収益性を低下させる。
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リサイクルの質の問題
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多くが燃料チップとして熱利用されるに留まり、素材価値が活かされていない。
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環境貢献のアピールが限定的になり、企業のブランド価値向上に繋がりにくい。
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これらの根深い課題があるからこそ、多くの現場で伐採木は「活用すべき資源」ではなく、「処理すべきコスト」と見なされてきました。しかし、技術の進化は、この常識を覆そうとしています。
第2章:可能性を引き出す最初の対話 – パートナーと描く活用シナリオ
伐採木の価値を最大化するプロセスは、木がまだ地面に根を張っている状態から始まります。井上企画が大切にしているのが、この「伐採前」の対話のフェーズです。

活用の可能性は、伐採前に見えてくる。
私たちは、まずお客様や設計者の方々の想いを伺うことから始めます。そして、伐採を担当する専門業者や、地域の製材所といったパートナーの方々と共に現場を訪れ、対象となる木と向き合います。それは、単に樹種やサイズを測るだけではありません。それぞれの専門家の知見を持ち寄り、その木が持つ「可能性」を多角的に探るプロセスです。
•検討の視点: 樹種、幹の太さや曲がり、枝の形状、健全性(腐りや空洞の有無)といった物理的な特徴に加えて、その木にまつわるお客様や地域の皆様の「想い」も大切な情報です。
こうした多角的な検討を経て、私たちは製材、木工、3Dプリントといった技術の垣根を越えて、最適な活用シナリオをお客様と一緒に描き出します。「この木なら、あの製材所が得意とする一枚板にできるかもしれない」「この枝ぶりは、あの木工作家の手にかかれば面白いオブジェになりそうだ」「製材は難しいが、木粉にすれば思い出の品をたくさん作れる」——。
このように、画一的な処理ではなく、様々な専門家の知恵と技術を組み合わせ、それぞれの木が持つ価値を最大限に引き出すためのシナリオをご提案する。このコーディネートのステップこそが、単なる廃棄物処理と、私たちの提供するアップサイクルソリューションを分ける、決定的な違いです。

第3章:伐採木を活かしきる、4つのアップサイクル手法
現地調査と診断を経て、いよいよ具体的なアップサイクルのプロセスが始まります。井上企画では、伝統的な木工技術から最先端のデジタルファブリケーションまで、多彩な選択肢を組み合わせることで、あらゆる伐採木を価値あるプロダクトへと昇華させます。
Part 1:伝統技術で木の生命を未来へ繋ぐ
診断の結果、製材可能な良質な木材や、その形状自体にユニークな価値が見出された木には、まず伝統的な木工技術での活用を検討します。これは、木の生命を最もダイレクトに、そして美しく未来へ繋ぐための王道のアプローチです。
•手法1) 家具・内装材への活用:
太く真っ直ぐな幹が確保できる場合、製材して乾燥させた後、テーブルやカウンター、などの内装材へと加工します。その土地で育った木が、新たな建築空間の一部としてその記憶を刻み込み、
訪れる人々にその物語を静かに語りかけます。
•手法2) 木工品・ノベルティへの活用:
看板や小物の木工品を製作することができます。人の手と感性によって、木の個性を最大限に引き出すこのアプローチは、既製品にはない圧倒的な存在感と愛着を生み出します。
Part 2:「製材できない木」のための新しい選択肢 – 3Dプリント技術
一方で、細すぎる、大きく曲がっている、あるいは樹種の問題で、どうしても伝統的な手法では活用が難しい木も存在します。そうした「製材できない木」にこそ、3Dプリント技術が新たな可能性の扉を開きます。

木を一度「木粉」の状態まで均質に分解し、樹脂と混ぜ合わせて再構築する。この逆転の発想により、元の木の形状や樹種に捉われることなく、全く新しいプロダクトを生み出すことができるのです。
•手法3) 大型家具・什器へのアップサイクル(ペレット3Dプリント):
木粉をプラスチックと混ぜ米粒くらいの「ペレット」と呼ばれる形に加工し、大型のFGF(Fused Granular Fabrication)方式3Dプリンターで直接造形します。この技術の最大の特長は、その造形スピードと強度にあり、人が座れるベンチや商業施設の大型カウンター、什器といった、建築スケールのプロダクト製作を可能にします。公共空間の新たなシンボルや、企業の顔となるエントランス家具など、その土地の木を使ったダイナミックな表現が実現します。

•手法4) 高精細プロダクトへのアップサイクル(フィラメント3Dプリント):
木粉を糸状の「フィラメント」に加工すれば、一般的なFDM(Fused Deposition Modeling)方式の3Dプリンターでの高精細な造形が可能になります。企業のロゴをあしらった記念品、施設の案内サイン、精巧な建築模型、オリジナルデザインのグッズなど、小ロット多品種のニーズに柔軟に応えることができます。お客様の想いを、細部にまでこだわった形で製品に宿すことができるのです。

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活用手法
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対象となる木
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主なプロダクト例
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特徴
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1) 家具・内装材
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太く、真っ直ぐな幹
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テーブル、カウンター
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木の質感・木目を最大限に活かす王道のアプローチ
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2) 木彫品・ノベルティ
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特徴的な形状の幹や枝
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看板、木工小物
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職人の手仕事による、唯一無二の価値創造
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3) 大型家具・什器
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製材不適格な木
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(屋内に限る)ベンチ、カウンター、オブジェ
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3Dプリントによるダイナミックで自由なデザイン
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4) 高精細プロダクト
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製材不適格な木全般
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ロゴサイン、ノベルティ、屋内パネルなど
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小ロット多品種のニーズに対応可能な高い再現性
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第4章:なぜ、今このソリューションが選ばれるのか? – 3者が享受する具体的なメリット
井上企画が提供するトータルソリューションは、伐採木に関わるそれぞれの立場に、明確で具体的なメリットをもたらします。

•【ゼネコン向け】コスト削減と企業価値向上を両立
これまで産業廃棄物として処理コストをかけていた伐採木が、有価物として買い取りの対象となったり、あるいはプロジェクトの資産として活用されたりすることで、直接的なコスト削減に繋がります。さらに、その取り組み自体が「環境配慮型建設」として企業のブランド価値を高め、ESG経営の観点からも強力なアピールポイントとなります。
•【設計事務所向け】物語を宿す、唯一無二のデザイン
「その土地の木を使って、その場所でしか作れないものを作る」。このコンセプトは、設計に唯一無二の物語と強力なコンテクストを与えます。クライアントへの説得力を高めるだけでなく、建築デザインの可能性を大きく広げ、他のプロジェクトとの明確な差別化を実現します。私たちは、設計者の創造性を最大限に引き出すための技術的なサポートを惜しみません。
•【行政向け】「質の高い循環」による地域価値の創造
公共事業で発生する伐採木を、単なる燃料チップではなく、市民が利用するベンチや施設のサインとして地域に還元する。この「質の高い循環」は、目に見える形で地域住民の環境意識を高め、その醸成に貢献します。また、地域の林業や木工業との連携を生み出し、新たな地場産業を創出するきっかけともなり得ます。
おわりに:伐採木は、プロジェクトの「資源」です
私たち井上企画は、単に木を加工する会社でも、3Dプリンターを販売する会社でもありません。お客様が直面する課題に寄り添い、伐採木という「資源」の価値を最大限に引き出すための、最適なソリューションを提案するパートナーです。
簡単なご相談から、活用の検討、そして木工技術や先端技術、その木材に適した形でどんなものにするべきなのか。などをサポートさせていただきます。
「この木で何ができるか?」
その問いをお持ちでしたら、ぜひ一度私たちにご相談ください。コストとして諦める前に、価値として活かす道を、共に探しましょう。

